2012-07-24(Tue)
今回は外リンパ瘻という病気についてご説明します。
まず解剖の話から・・・。
内耳(中耳の奥の部分)には聴覚(聴こえ)に関わる蝸牛(かぎゅう)と平衡(バランス)に関わる前庭(ぜんてい)・半規管(はんきかん ちなみに3つあるので三半規管とも呼びます)があります。
それらは骨でできていますが内腔はリンパ液という液体で満たされています。
リンパ液には2種類あり、外リンパ液と内リンパ液に分かれます。
内耳と中耳には薄い膜で隔てられている部分があり、その膜の破綻からリンパ液(具体的に言うと外リンパ液)が漏出し、内耳の中心の部分(正確には膜迷路といいます)が虚脱を起こすことで高度の難聴やめまいが生じます。
奇形、耳の手術によるもの、梅毒、外傷が原因といわれておりますが、特発性、つまり原因不明のものも多いと言われております。
いきみ、鼻かみがきっかけで起こることもあります。
発症時にポンッと破裂するような音がしたり、発症後水が流れるような耳鳴りがすることもあるため診断確定に問診が重要になります。
上記の他に、耳を指で塞ぐとめまいが悪化したり、難聴が日に日に悪化し数日で高度難聴になった場合も本疾患を疑う条件になります。
所見としては、聴力検査において他の急性感音難聴の疾患と同様に感音難聴の聴力像を呈します。
そして先ほど述べました通り発症から数日で高度難聴に至る場合があります。
治療ですが、頭を高くする、あるいは患側耳を下にしないようにして安静に保つことがまず大事です。
日常診療上、先述の突発性難聴やメニエール病との鑑別が難しく、初診の段階で外リンパ瘻と診断確定できないことも多いので突発性難聴の治療に準じた点滴治療を並行して行うことが多くあります。
それでもなお症状が悪化したり、先述した外リンパ瘻を疑う条件を認めた場合手術を行うことがあります。
画像やその他の検査で外リンパ瘻があるかどうかはわからないため、診断を確定するには手術で中耳の中を観察し漏出が無いかどうかを目で確認するしかありません。
手術は全身麻酔下に行います。中耳を顕微鏡的に観察し内耳からの液の漏出が認められた場合、自身の組織を用いて漏出部をフタして漏出を止めます。
この疾患も必ず治るとは言えません。
めまいはある程度落ち着いてくることが多いですが、難聴は残ってしまうことが多々あります。
そういった後遺症を少しでも軽減するにはやはり加療を速やかに行うべきと考えます。
上記の症状やエピソードがあった場合、速やかに御相談ください。
当院では残念ながら手術はできませんが、症状や所見、経過から外リンパ瘻と判断した場合、責任をもって関連病院へ御紹介いたします。
[名古屋市名東区 一社 まえはら耳鼻咽喉科]
2012-07-17(Tue)
今回は聴神経腫瘍についてご説明いたします。聴神経腫瘍も急性感音難聴をきたす可能性のある疾患の一つです。
聴神経とは聴こえの神経(蝸牛神経と言います)とバランス(平衡)の神経(前庭神経と言います)を合わせた呼び名です。
聴神経は内耳から出て内耳道という骨で囲まれた筒状の道を通り脳に伝わります。
内耳道には前述の蝸牛神経と前庭神経の他に顔面神経(顔を動かすための神経)も走行しています。
聴神経腫瘍とは聴神経にできる腫瘍のことです。
腫瘍は内耳道内にできるため、内耳道を走行する神経の障害に伴う症状が出現します。
つまり、難聴、耳鳴り、めまいが主な初期症状です。腫瘍が大きくなると顔面神経麻痺を生じたり、あるいは腫瘍が内耳道から進展し脳の方へ影響が出てくると頭痛、吐き気、意識障害、歩行障害、嚥下障害などの症状が出現します。
この疾患で気をつけなければならないのは突発性難聴との鑑別です。どちらかの耳の聴こえが急に悪くなることがあるため(約10から20%)、突発性難聴として経過を診ていくうちに聴神経腫瘍であると判明することがあるのです。
(以前から説明しております通り、急に発症する神経性の難聴(急性感音難聴)のうち突発性難聴は治療の効果が得られる期間が決まっているため、後に別の疾患であると判明する可能性があってもまずは突発性難聴として加療し、必要に応じて検査を並行して行うことが一般的です。)
鑑別の方法ですが、当院でも行える検査として標準純音聴力検査、レントゲンがあります。
聴神経腫瘍における標準純音聴力検査ではさまざまな聴力のパターンを示します。
ただし、15%程度の方に特徴的なパターンを示すことがあり、そのような結果が得られた場合には腫瘍を疑い、さらなる精査を行います。
画像検査ですが、現在、CTやMRIの発達により、それらで診断できる率が高くなっています。当院ではCT,MRIはないためレントゲンでの診断になります。
レントゲンで内耳道の幅の著しい左右差が無いか確認します。(腫瘍はどちらか一側にできるため、内耳道幅の差があれば腫瘍を疑います)
場合によっては他院でCT、MRIをお願いすることもあり、より正確な診断ができるよう努めてまいります。
突発性難聴ではこういった病気がかくれている事があるため、必ず経過観察が必要になります。
治療は手術あるいは放射線が行われます。
よって疑われる場合には速やかに専門機関に御紹介いたします。
[名古屋市名東区 一社 まえはら耳鼻咽喉科]
2012-07-14(Sat)
この度、正式に開院日が決まり、平成24年11月12日(月)開院することになりました。
平成24年11月10日(土)および11月11日(日)には内覧会も行います。
気軽に内覧会にお立ち寄りいただき、私達スタッフやクリニックの雰囲気
を是非見ていただきたいと思います。
開院日が決まり、身の引き締まる想いです。
地域の皆様に喜んでいただけるクリニックができるよう、今後も精一杯努力してまいります。
[名古屋市名東区 一社 まえはら耳鼻咽喉科]
2012-07-10(Tue)
今回は急性感音難聴のうちメニエール病について説明いたします。
めまいと言えばメニエール病、というくらい皆さんよく御存じの病気ではないでしょうか。
めまいの総論に関してはまた改めてアップしますが、めまいを患っている患者さんの中でメニエール病と診断されるのは、実はほんのひと握りの方です。(人口10万人に対して約20名弱との報告があります。)
そしてめまいだけではなく難聴(急に起こる神経性難聴、つまり急性感音難聴です)や耳鳴りも併発します。
特徴は難聴、耳鳴り、めまい(回転性)を繰り返す病気であるということです。
つまり初めて起こった難聴、耳鳴り、めまいである場合、先日御説明した突発性難聴との鑑別がつかないことがあります。そのため突発性難聴と同様に長期的な経過観察が重要です。
原因ははっきりしていませんが、内耳(中耳の奥にある、聴こえ、バランスに関わる神経の部分)に水(内リンパ液)が過剰に溜まってしまうということはわかっています。(この状態を内リンパ水腫と呼びます。)
症状は前述の通り、めまい(ほとんどが回転性で10数分から数時間続きます。吐き気や嘔吐などの自律神経症状を伴うことがあります。)、難聴(ほとんどが一側性で発症初期には低音域の難聴が多く、自覚的には耳閉感を伴うことが多いです。発作が落ち着くと一旦は正常まで改善することがありますが、長い目でみると発作を繰り返すことで徐々に聴力が低下していきます。)、耳鳴りです。そしてそれらの症状は繰り返し起こります。発作が起こるきっかけはストレスや疲労、不眠であることが多いと診察していて感じます。
治療ですが他のめまい同様、発作状態のときは安静、臥床、点滴が主の治療になります。
さらに神経性の難聴を伴う場合、ステロイドも併用し加療していきます。
めまいがある程度落ち着いてきたら抗めまい薬や利尿薬(病態が水腫であるため水を引く目的)などを内服していただき経過をみていきます。
確かに発作を繰り返す病気ではありますが、普段からの体調管理により発作を少しでも予防することができると思います。具体的にはストレスや疲れをため過ぎない、睡眠時間をしっかりとり、栄養もバランスよく摂取する。当たり前のようですがとても大事なことであると思います。
[名古屋市名東区 一社 まえはら耳鼻咽喉科]
2012-07-03(Tue)
突発性難聴
今回は急性感音難聴のうち突発性難聴についてお話します。
読んで字のごとく突然聴こえが悪くなる病気です。
突発性難聴はほとんどの場合、一側性ですが両側に起こることも絶対にないとは言い切れません。
症状として耳鳴やめまいを伴うことがあります。
残念ながらいまだにはっきりとした原因はわかっていません。
何らかの原因により、内耳(中耳のさらに奥にある神経の部分)の音を感じる神経細胞が障害を受けて発症します。
病態としてはこれまでの様々な臨床研究から、内耳への血液の流れが悪くなった状態つまり「内耳の血流障害」と考えられています。
原因がまだわかっていないので確実な治療は決まっていませんが「内耳の血流障害」が最も考えられるため、細かい部分の血流を改善させる治療が推奨されています。
いずれの治療も、発症後できるだけ早期に開始することが望まれます。
当院では
・ステロイド(内服や点滴)
・血流を改善させ得る種々の薬剤(内服や点滴)
・(末梢神経障害の修復を目的として)ビタミンB12(内服や点滴)
・ヘルストロン(後日説明いたしますが血流を良くするリハビリ機器です)
を使用し治療を行います。
(但し、糖尿病などの基礎疾患があり治療の副作用の出現に注意が必要である場合は入院のできる施設に御紹介することもあります。
あるいは入院治療を御希望とされる際には速やかに御紹介いたします。)
(当院では行えませんが)他に有効とされている治療法は
・ステロイド鼓室内注入:ステロイドを鼓室、つまり中耳に直接注入する方法
・高圧酸素療法:高濃度の酸素を投与する方法
・星状神経節ブロック:頸部の交感神経に麻酔をし、血管を拡張させて血流を改善する方法
などがあります。
日本中どこの施設でも上記のうちいくつかを各医療施設の方針として組み合わせで行なっているのが現状です。残念ながら統計学的検証で、「これが他の治療より間違いなく効いて、安全性にも問題ない」 というものはありません。したがって、現時点では突発性難聴に対して飛びぬけた治療は存在しない、と言わざるを得ないと思います。
また、治療以外にも内耳の血流を少しでも良くするような日常の心がけが必要です。 睡眠を十分取り、心身をリラックスさせることは非常に重要です。精神的・肉体的ストレスを少しでも緩和させるように努力しましょう。 ストレスがあると自律神経を介して、細い血管は収縮して血流は低下します。タバコはニコチンが末梢血管を細くしてしまいますので非常に悪影響です。
以前、ご説明いたしました通り全ての人が完治するわけではありません。おおよそ3分の1は完治し、3分の1は回復するが難聴を残し、3分の1は改善しないと言われています。 難聴は改善しても耳鳴り、ふらつきなどが後遺症となることもあります。突発性難聴は再発しないことが一つの特徴ですが、ごくまれに反対側の耳が突発性難聴になることがあります。
また、経過をみていくうちに実は他の病気であることが判明することもあります。
したがって、この病気になった後は耳鼻咽喉科での定期的な聴力検査をお勧めします。
[名古屋市名東区 一社 まえはら耳鼻咽喉科]
2012-07-03(Tue)
医院の内装の大まかな案が固まりつつあります。設計・施工業者の方々が私たちの希望を細かく聞いてくださり、それを図案化してくださいました。
素晴らしい医院ができると思います。私たちも完成がとても楽しみです。
皆様が安心して受診できる空間を作っていきたいと思いますのでどうぞご期待ください。
[名古屋市名東区 一社 まえはら耳鼻咽喉科]
2012-07-03(Tue)
300人以上の方々に訪問していただきました。ありがとうございます。
できるだけ頻回に更新していきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
[名古屋市名東区 一社 まえはら耳鼻咽喉科]